卯の花のこぼるる蕗の廣葉哉 蕪村

鉱烟もほの匂ふ山や蕗の雨 碧梧桐

山里や木小屋の中を蕗の川 蛇笏

蕗の葉の小さきもろさや茅の中 風生

蕗むくやまた襲ひきし歯のいたみ 久女

伽羅蕗の滅法辛き御寺かな 茅舎

蕗の葉のうち重つて沢となる 青邨

蕗をつみ蕗を煮てけさは 山頭火

けふも摘む蕗がなんぼでも 山頭火

蕗をつみ蕗をたべ今日がすんだ 山頭火

煮る蕗もほろにがさにもおばあさんのおもかげ 山頭火

誰も来ない蕗の佃煮を煮る 山頭火

蕗つめば蕗のにほひのなつかしく 山頭火

蕗の香のしみじみ指を染めた 山頭火

皸の漸く癒えて蕗茹る 石鼎

大蕗をどさと下ろしぬ納屋の前 石鼎

蕗剥ぐや蜘蛛の糸のごと胼の手に 石鼎

蕗の雨地下に発破をかけつあり 誓子

地にこもる発破を聞きぬ蕗の沢 誓子

蕗の雨電気機関車燈を照らす 誓子

蕗の沢炭車の行ける音はする 誓子

やまみづの珠なす蕗の葉裏かげ 蛇笏

波荒く港といへど蕗繁り 多佳子

梅雨の蕗瑠璃なす淵にしづくする 秋櫻子

花桐のこぼれし蕗の広葉かな 茅舎

近江より雲来て蕗に降らす雨 楸邨

蕗のひま黒部黒薙相搏てる 楸邨

蕗畑のひかり身にしつなつかしき 多佳子

蕗苦しけふ陥つるなり伯林は 波郷

蕗を煮る男に鴉三声鳴く 三鬼

ひそやかに来ては濯げる蕗の水 汀女

蕗煮る妻の贔屓角力は負け去んぬ 波郷

蕗の上しろがねのべて霧の湖 秋櫻子

蕗刈るや霧よりしろき屈斜路湖 秋櫻子

蕗伸びてくらき典医の家構 秋櫻子

湧く水の音かき消すは蕗の雨 悌二郎

苗代を見めぐり蕗もさはに摘む 爽雨

蕗をむく椅子はきしみてかなしめり 静塔

村道のまた蕗に沿ふみづみづし 爽雨

こころざし蕗撓めつつもたらしぬ 爽雨

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