和歌と俳句

種田山頭火

前のページ< >次のページ

糸瓜植ゑる、そこへ哀しい人間がきた

親も子も田を植ゑる孫も泥をふむ

煮るもほろにがさにもおばあさんのおもかげ

もおちつかない二人のあいだ

昼も蚊がくるうつくしい

はれたりふつたり青田となつた

梅の実も落ちたままお客がない

田植べんたうはみんないつしよに草の上で

なにかさみしい茅花が穂に出て

草しげるそこは死人を焼くところ

けふもいちにち誰も来なかつた

いつもかはらぬお地蔵さんで青田風

水音をふんで下ればほととぎす

すつぱだかへとんぼとまらうとするか

ふりかへるうしろすがたが年よつた

とんできたかよいつぴき

伸びあがつて蔓草のとりつくものない

竹の子も竹となつた窓の明け暮れ

梅雨空へ伸びたいだけ伸びてゐる筍

てふてふひらひらおなかがすいた

むしあつく蟻は獲物をだいてゐる

ひとりでたべるとうがらしがからい

夏山ひそかにも死んでいつたか南無阿弥陀仏

晴れわたり蓮の葉のあたらしい色

草の青さに青い蛙がひつそり