よき人の袂を吹いて扇風機
灯に向いて泰山木の蕾かな
杉の木にキャンプのポスト掛けてあり
谷間はやかげり来し日傘かな
けふもまた浅間の灰や避暑の宿
雨かかる川魚料理はこび来る
岩檜葉を掴むんで渉る滝探り
滝壺に近づけば滝そちこちに
飛んで来る水の礫や滝探り
蕗の葉のうち重つて沢となる
蕗の中あはれ一八咲きにけり
一枚の葉にかくれたる牡丹かな
クリームの重つて濃し花さうび
山路や一人静の花もよし
屋根高し牡丹庭に莟せり
見えたりや筍掘りのマッチの火
椎の闇しきりに椎の落葉かな
椎大樹欝然として落葉する
庭草に蛍ともりぬ雨のあと
えごの花こぼるゝ中へ舟を入れ
えごの花遠くへ流れ来てをりぬ
河骨を見てゐる顔がうつりけり
桑の実に唇そめし女房かな
青蔦にはげしき雨の来りけり
青蔦の一筋ほつれ下りけり