和歌と俳句

與謝蕪村

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草の雨の車過てのち

名のれ名のれ雨しのはらのほととぎす

かきつばたべたりと鳶のたれてける

短夜や一つあまりて志賀の松

卯の花のこぼるるの廣葉哉

の藪の案内やをとしざし

夏百日墨もゆがまぬこころかな

日を以て数ふる筆の夏書哉

飛石も三つ四つ蓮のうき葉

蓮の香や水をはなるる茎二寸

河骨の二もとさくや雨の中

河床や蓮からまたぐ便にも

箒目のあやまつ足や若楓

見わたせば蒼ひとくさよ田植時

浅間山煙の中の若葉かな

短夜やおもひがけなき夢の告

更衣うしと見し世をわすれ顔

とろろ汲む音なしの滝や夏木立

藻の花や藤太が鐘の水離れ

葉がくれの枕さがせよ瓜ばたけ

岩倉の狂恋せよ子規

絶頂の城たのもしき若葉かな

や甥の法師が寺とはん

ころもがへ塵打払ふ朱の沓