和歌と俳句

與謝蕪村

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何喰て居るかもしらじかんこ鳥

金掘る山もと遠しかんこどり

親もなく子もなき声やかんこ鳥

我捨しふくべが啼か閑居鳥

かんことり木の股よりや生れけん

更衣布子の恩のおもさかな

廿五の暁起やころもがへ

羽色も鼠に染めつかんこ鳥

衣がへ人も五尺のからだかな

三軒家大坂人のかやり

鞘走る友切丸やほととぎす

牡丹散て打かさなりぬ二三片

閻王の口や牡丹を吐かんとす

蚊屋を出て内に居ぬ身の夜は明ぬ

短夜の夜の間に咲るぼたん

みじか夜や毛むしの上に露の玉

みじか夜や二尺落ちゆく大井川

さみだれのうつほ柱や老が耳

かしこくも茶店出しけり夏木立

動く葉もなくておそろし夏木立

五月雨や美豆の寐覚の小家がち

誰住みて樒流るる鵜川

しののめやをのがれたる魚浅し

夕顔の花噛む猫や余所ごころ

日がへりに兀山越るあつさかな