和歌と俳句

篠田悌二郎

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尻振つて椋鳥が啄む梅雨芝生

蘂みだれ降りみ降らずみ美女やなぎ

青梅雨の景とし枯れし杉残す

樹々の奥梅雨も枯葉が絶えず降る

常揺らぐ浮葉の陰の糸蜻蛉

細藺むら風に騒立ち菖蒲園

春蝉や希ひし晴の暑過ぎて

十燭光本尊照らす青葉木莵

青葉木莵懐へるときは遠くをり

桐の花今に扉のなき三の門

巣の雀らしや出で入る天守閣

蛾をとどむ子規の三畳のぞき去る

肱川や流れそめしは早苗

海男児の土佐は宿毛の鯉幟

薫風に真珠育て荒男ども

花樗トラック否む子牛跳ね

端の麦秋わかき月かかげ

期し来たる涛音はなく夜の蛙

初夏宵月白波碆に遊びをり

碆散つてわかき五月の波なき日

ひとつ碆ばかり波攻む五月晴

旅五日目土佐へ入るより更衣

アマリリス土佐闘犬を飼へる門

歩危の名の二渓万緑鬩ぎ合ふ

小舟高く崖に吊せり花茨