和歌と俳句

篠田悌二郎

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風晴れて繊きトリトマ揺らぎあふ

二度咲きのあはれを土用百花苑

鷺草の飛翔全き花ひらく

関址は役宅残る百日紅

花了へて牡丹諸葉をそよがする

一週の牡丹の誇り散ってなし

熔接光六月の野のまっぴるま

六月や湖は見えねどの宿

山開き雪の乗鞍遠く置き

雲表に雪嶽つらね咲く小梨

岩雲雀雪をさすがに遠穂高

着くや否や西日と入るる植田風

ほととぎす未明の杉生匂ひ立ち

梅雨晴も三日は荷とす旅の傘

しどけなき落花泰山木ほどの木も

窈窕とはこれ竹に鷺一羽

稀に鷺地に下り歩む木下闇

荒梅雨や海還へる日の鷺の数

青萩に怒濤の月下懐ひをり

泰平の鷹の碑残す梅雨落葉

玉虫の墜ちしが飛べり見逃せり

日盛りの池に五百の換羽の帆

燥く身の蝉黒濡れの眼を瞠る