蕗の雨地下に発破をかけつあり
地にこもる発破を聞きぬ蕗の沢
蕗の雨電気機関車燈を照らす
蕗の沢炭車の行ける音はする
うまごやし露頭の石炭をかくすなき
苜蓿に寝墓かしげり丘かしげり
苜蓿に寝墓を銘をのこしける
金鳳華神婢嬰児の墓に咲きぬ
苜蓿天主の婢僕十字のもと
苜蓿や墓のひとびと天に帰せり
船ゆけり夏の島山を率てゆけり
南風やすすむ前檣綱を統べ
船煙暑き大日輪隠る
籐椅子や海の傾き壁をなす
檣燈を夏の夜空にすすめつつ
夏の夜の満天の星に船檣を
青海を瑞の籬とす避暑の荘
海すゞし冬の壁炉は部屋にある
青柿に笑とまらずいとし子等
避暑の荘鎧戸白く夜をささず
闇にしてキヤムプの錘の金色に
洋杖が立てりキヤムプの平砂に
秋の夜の母体と嬰児同じ向きに
秋の夜を生れて間なきものと寝る