和歌と俳句

山口誓子

黄旗

空ゆけば十方あかるく枯野黄に

わがとべる翼下に江の凍てかたき

翼揺れて氷る松花江はや過ぎぬ

両岸に燈が見え江は凍てずあり

楼に見て枯野は遠くより来る

楽浪郡枯野をかへし丘を掘りぬ

枯れし丘石階は崩え石かたぶき

枯れし丘石階は踏まれすりて減る

啄木鳥は頸うちふりて寒木に

啄木鳥は嘴かんかんと寒木に

苑に観る寒林の日はつねに西

煖炉にも枯木枯枝影させる

仏国寺駅寒夜の汽車に松明かざす

上天に集りて韓の星凍てし

鵲降りて氷れる水を道に踏む

鵲白く枯木とともに日の翳に

石仏を寒しと昼の日に拝む

釈迦のかげに十一面観音さむからず

柿かぞふ韓の数字のあなおもしろ

陵や邑の轍を枯れ芝

低き墻五つの陵枯れしよと

冬紅葉長門の国に船着きぬ

冬紅葉故国はかくも天霧らふ