和歌と俳句

山口誓子

鏡中に煖炉の鋼深く見ゆ

煖炉燃え鴉片の洋燈柿色に

川涸れず深き轍は川に見ゆ

渤海を大き枯野とともに見たり

鞍山の枯野に紅き熔鋼をながす

枯野来て帝王の階をわが登る

枯原に御厩の馬を石としぬ

陵枯れぬ尻尾地につき石馬立つ

陵枯れぬ短き脚の石馬立つ

枯原に鈍の駱駝を石としぬ

陵さむく日月空に照らしあふ

陵さむく日は月よりも低くなる

冬日没る諸仏歓喜を見て立たす

歓喜仏冬の没日は紅玉に

枯れし木と激戦のときの壁立てり

石獣は前脚を折りて枯原に

石獣の背骨隆しも枯原に

凍て土のその土色の獄衣を

獄凍てぬ刑場と書きし壁の門

孤し児の字読むと編むとストーヴ

木々枯れぬあつき泉は野に湧ける

傷兵は黄なるマントを白き衣に

傷兵は冬も白衣に靴穿ける