寒の射に女身も両の脚開き
梅一枝折らば一指を断といふ
左手を祈りの手とし遍路立つ
富士の裾残雪の垂れ揃はずも
雪中に湧く情強き山清水
八ヶ岳霞みたれども八つ並ぶ
瀬の曲りなぞりて雛の流れゆく
荒川となり流し雛見えずなる
知盛の谷水田とし植田とす
馬の背のしとどの汗を掻き落す
遠き世の如くに遠くに蓮の華
倒れ木をくぐる登山者身を低め
大文字木を焚く火とは思はれず
大文字交叉の点の火を強む
燃えさかり筆太となる大文字
大文字第一劃の衰へそむ
祭幕平家亡びの海を描き
睡蓮の葉があれば乗るみづすまし
萍の平は水の平なる
風倒の稲これ以上凹まざる
み仏の肩に秋日の手が置かれ
芭蕉忌にビルのガラスの絶壁よ
八鬼山を登る胸まで草じらみ
峠神九鬼からは鰤奉る