和歌と俳句

富安風生

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

古き沼立待月を上げにけり

町すぢの藁家のかへし障子かな

虫きいて明るき部屋に戻りけり

虫の園上がる径あり上りもす

桔梗と挿して長しや青芒

菊人形景色の芒ほうけたり

笊のそこにすこしたまれる零余子かな

四阿にとりためありし零余子かな

女郎花こぼれこぼれてなかりけり

紅葉山下りきて遠くなりにけり

あをあをと破れし芭蕉をいたみけり

帝展のあきをる桜紅葉かな

秋雨や大きく暗き納屋の中

萩くぐる秋雨傘を傾けて

秋雨の客珍しや百花園

の鳴きしと思ふたちどまる

蟋蟀の親子来てをる猫の飯

空濠の竹の春なる館かな

無花果の背戸もきれひに掃いてあり

木犀や西洋館の日本室

草紅葉松亭々とあるばかり

岩の上に傘を杖つく紅葉かな

紅葉渓月えをかかげて暗きかな

干稲を被つてゐしは茶の木かな

姪どもの走せ先立てる墓参かな

樫の実を掃くばかりなる墓掃除

時化雲のはしる唐黍もぎにけり