和歌と俳句

富安風生

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野分中月は光を得つつあり

道ひろく村の子遊ぶ秋の暮

本読めば本の中より蟲の声

こほろぎのへりたることに気がつきし

むいてかなしき話女たち

小鳥来て午後の紅茶のほしきころ

一つ摘み二つ摘み菊籠にみちぬ

挽臼にとりつく母娘葛の宿

手にとりて放ちしの枝長し

白菊に起居の塵のおきにけり

花籠を垂るる朝顔朝茶の湯

満山の白露に居る思ひなり

兄弟の墓のよりそふ道の

漂へるごとくに露の捨箒

起こしやる紫苑にすぐに烏蝶

一葉に十三夜あり後の月

わが老をわがいとほしむの前

下駄の音ころんと一つ秋ふかし

露の宿槙垣ふかく灯しぬ

秋嶺を搦めてゆるき径一すぢ

家のうちあはれあらはに盆燈籠

法師蝉煮炊といふも二人きり

わがあとに径もつき来る秋の山

三行の葉書だよりの露の情

露の宿掃き出す塵もなかりけり

捨てありし露の箒をとりしあと

遠稲架に景色かくれて鷺とべり

秋雨のつめたきことのこころよさ