霧
翠屏に霧たちわたる滝谺 風生
霧迅し十和田の湖の常乙女 青畝
かたき地が霧で滑るよ一茶の地 草田男
倉床に塵紙敷いて霧に憩ふ 草田男
霧にこゑごゑ学校の形して 誓子
日輪の形骸霧にたかられて 誓子
霧とびて馬籠の菊もうつぶしぬ 青畝
霧に傷み提燈黒き修験道 誓子
北海の霧の中にて神隠し 誓子
大台の霧時化波のごと来る 青畝
山坊は時々刻々に霧に朽つ 誓子
霊山を薬の如き霧通る 誓子
霧を紗とし木曾の首なしマリヤさま 楸邨
落葉松は霧を淋しと立ち揃ふ 風生
あしもとにからまる霧につまづきぬ 風生
はぐれたるはかなき霧にまつはられ 静塔
一切のこの世の霧に霧笛鳴る 誓子
うたた寝の霧の閉ざせば閉ざすまま 林火