和歌と俳句

よびとめて白き夜霧に別辭かな 汀女

突然と霧の中より子等の声 立子

舷に物ふるゝ音霧の中 立子

夜霧濃く戦死兵ありこの町に 鷹女

霧の町しろき花輪が眼にしみる 鷹女

かなしみの灯をとぼすなり霧の町 鷹女

霧の町弔旗垂れたりよもすがら 鷹女

霧の町月光はある樺色に 鷹女

霧の夜に堪へて化粧へり濃き化粧 鷹女

窓押せば霧流れ入る霧はかなし 鷹女

あかつきの舷燈よごれ霧をゆく 多佳子

腹へりぬ深夜の喇叭霧の奥に 三鬼

霧の夜々同じ言葉の別れかな 波郷

霧の夜々幾日黙す兄妹ぞ 波郷

白き霧あふれて開く朝の門 静塔

霧の中小島頻りに渡りけり 虚子

火口壁まなかひに失せて霧吹けり 秋櫻子

地獄沼霧はしるとき波たたむ 秋櫻子

湯華掻く岩うかびたり霧の瀬に 秋櫻子

湧く霧の湧きつぐひまに湖見ゆる 秋櫻子

裾山の霧や白樺立ちまじり 秋櫻子

碇泊の艦の灯にじむ霧の海 みどり女

父の墓霧に濡れをり拭ひやる 鷹女

父の墓兄の墓にも霧降れり 鷹女

山中の鉄路を霧の越えわたる 誓子

午も過ぎ霧の日輪かたちなし 誓子

赫と日が霧の内界照らしだす 誓子

霧深く山を覆ひぬビル灯る みどり女

ややながき手紙や崖をくだる霧 楸邨

子守唄きこえくるなり夜の霧に 鷹女

くちびるに夜霧を吸へりあまかりき 鷹女

窓ひらき吾子と夜霧の燈をかぞふる 林火

まなかひに来れる霧に小さき子よ 汀女

霧の谷何も見えざる大いさよ 素十

走せつゞけうなづきつゞけ霧の馬 草田男

霧ふかく川曲りゆき日本なり 楸邨