しぶとかるべしこの兜虫声出さば
白桃のゆるる鉄柱打ちこまる
けんらんたる女を消せば百日紅
顔の上にまた顔載せて野分仏
秋風の口閉ぢられぬ癪の神
しぐれきし我にあらずや癪の神
すべもなく催促金神しぐれをり
口よせてささやき明神遠しぐれ
しぐれゐて神と仏が寄せあふ肩
鼻蹴つてはたはた谷へ忿怒仏
思惟仏秋の青苔身にあふれ
婆羅門女天狗さびしき顔す栗ころげ
霧にひらいてもののはじめの穴ひとつ
野分ふく腹に力を子安神
橡の実のころころ子安神の陰
ほのぼのと神のみほとの秋の暮
ゐのこづちふりはらひしが阿修羅をり
秋の暮なほ暮れぬ間を樹胎仏
神に仏になれぬ狼石に冷ゆ
消ゆる仏に稚なくそよぎさるをがせ
瀬の岩の秋陽炎の少女尻
渡り鳥乳房持つもの瀬に仰ぎ
霧を紗とし木曾の首なしマリヤさま
曼珠沙華泣かぬ少女の嫌はるる