青あらし身も日輪もくつがへり
木曾駒の雹夕映の色が透く
蝶ありてその肢けぶりにも似たり
山刀伐や大かたつむり雲に匍ふ
夏露一顆むかし茂吉の赤松か
霧匂ふ月山筍を食ひをれば
深緑や開かぬかぎりは我の口
霧が湧きくる山の蛙の喉ぶくろ
霧の間と蠍座の間をさまよへり
鬼羊歯の秋すさまじき真青かな
梨食ふと目鼻片づけこの乙女
蟷螂の斧むけられし猫の顔
わが夢をしぐるる海の一ゆすり
猫に名をあたへて我はしぐれをり
落鮎の瀬のすぐそこは日本海
鰯雲雨飾岳我にうごく
親不知野分の石の石に落つ
曼珠沙華過ぎゐてまぶし一悪路
水漬く稲刈りゐて顔を失へり
水漬く稲干すもひねもす霧の中
松葉蟹食はんと芭蕉忘れをり
流木のがぼりと消えてこぼれ萩
秋雲や抱きて旅の捨子猫
秋草にお頼み申す猫ふたつ
はたおりが翔てば追ふ目を捨子猫
ははこぐさなびきなびきて猫の上