和歌と俳句

加藤楸邨

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青あらし身も日輪もくつがへり

木曾駒の雹夕映の色が透く

蝶ありてその肢けぶりにも似たり

山刀伐や大かたつむり雲に匍ふ

夏露一顆むかし茂吉の赤松か

霧匂ふ月山筍を食ひをれば

深緑や開かぬかぎりは我の口

霧が湧きくる山の蛙の喉ぶくろ

霧の間と蠍座の間をさまよへり

鬼羊歯の秋すさまじき真青かな

梨食ふと目鼻片づけこの乙女

蟷螂の斧むけられし猫の顔

わが夢をしぐるる海の一ゆすり

猫に名をあたへて我はしぐれをり

落鮎の瀬のすぐそこは日本海

鰯雲雨飾岳我にうごく

親不知野分の石の石に落つ

曼珠沙華過ぎゐてまぶし一悪路

水漬く稲刈りゐて顔を失へり

水漬く稲干すもひねもす霧の中

松葉蟹食はんと芭蕉忘れをり

流木のがぼりと消えてこぼれ萩

秋雲や抱きて旅の捨子猫

秋草にお頼み申す猫ふたつ

はたおりが翔てば追ふ目を捨子猫

ははこぐさなびきなびきて猫の上