新涼
大富士のはるか下雲涼新た 蛇笏
新涼やとり散らしある二三冊 万太郎
新涼の淵は影あそぶ魚もなし 秋櫻子
新涼やさらりと乾く足の裏 草城
新涼の水の浮べしあひるかな 敦
新涼や芝這ふ如く雨到る 立子
新涼の雲堂塵を許さざり 秋櫻子
新涼や禅宗坊主美しく 青畝
遠眼にも園新涼の岩の縞 爽雨
新涼や死んだ女房の一周忌 万太郎
闇の米うりにくる涼あらたなり 万太郎
新涼や起きてすぐ書く文一つ 立子
新涼の咽喉透き通り水下る 三鬼
新涼の水に老けたり水馬 青畝
新涼や約束の不意の客 立子
新涼や山荘の餉の生野菜 立子
新涼や人老い湖に齢なし 風生
新涼や臥言につづく深睡り 波郷