和歌と俳句

桐一葉

せゝらぎをゐざりおほせし一葉かな 泊雲

底深く流るゝ見ゆる一葉かな 泊雲

飛び石とならび据はれる一葉かな 泊雲

草城
風吹けばさかんに落つる桐一葉

草城
乾かして焚きつけにする桐一葉

青邨
手をかざす火鉢の前の一葉かな

青邨
キャフェの裏にして工場の桐一葉

夜半
消息のつたはりしごと一葉落つ

としどしや井桁の上に桐一葉 花蓑

静かなる午前を了へぬ桐一葉 楸邨

桐一葉城址の水の乏しき井 占魚

桐一葉月光むせぶごとくなり 蛇笏

草田男
桐一葉音たゆみなき鍛冶の音

掃き送る桐の一葉を先き立てて 虚子

万太郎
一葉落つ圓生可樂いま小さん

草田男
桐一葉影が来かけて人往にむ

草田男
桐一葉板の間住みに拾ひ来て

草田男
桐一葉遥か遥かを知人過ぐ

石鼎
桐一葉風がもて擦る土の上

綾子
子に尿さす桐の一葉落ちて来る

万太郎
桐一葉芝生の雨にうたれけり

万太郎
桐一葉空みれば空はるかなり

万太郎
桐一葉落ちたるひそかる念

青畝
歯のゆるぎ易く老いたり桐一葉

老の胸驚き易く一葉落つ 風生

静塔
桐一葉いまだ梢の葉なりけり