秋立つと知らずや人の水鏡
旅人や秋立つ船の最上川
旅の秋立つや最上の船の中
家の向き西日に残る暑さ哉
肌寒み寐ぬよすがらや温泉の匂ひ
俳諧の咄身にしむ二人哉
昼中の残暑にかはる夜寒哉
文机にもたれ心の夜寒哉
我背戸に二百十日の茄子哉
滝の音いろいろになる夜長哉
秋晴て故人の来る夕哉
命には何事もなし秋のくれ
宿とつて見れば淋しや秋のくれ
行く秋の淋しく成し田面哉
みちのくを出てにぎはしや江戸の秋
暁のしづかに星の別れ哉
うれしさや七夕竹の中を行く
つらつらとならび給へり魂祭
草市にねぎる心のあはれなり
燈籠の火消えなんとす此夕
風吹て廻り燈籠の浮世かな
やせ村に老もこぞりし踊かな
木の末に遠くの花火開きけり
風吹てかたよる空の花火哉
星ちるや多摩の里人砧打つ
ふんどしになる白布を砧哉