秋の雲太平洋を走りけり
犬つれて松原ありく月見哉
名月や何やらうたふ海士が家
名月や誰やらありく浪の際
明月のうしろに高し箱根山
明月や山かけのぼる白うさぎ
明月の中に何やら踊りけり
塩汲の道々月をこぼしけり
名月やどちらを見ても松許り
待宵や夕餉の膳に松の月
待宵や出しぬかれたる月のてり
明月を邪魔せぬ松のくねり哉
足元をすくふて行くや月の汐
後しざりしながら戻る月見哉
名月や汐に追はるる磯伝ひ
明月やとびはなれたる星一ツ
沙濱に足くたびれる月見哉
寝ころんで椽に首出す月見哉
沙濱に打廣げけり月の汐
名月や松を離れて風の聲
名月や闇をはひ出る虫の聲
名月やもう一いきで雲の外
雲に月わざわざはいるにくさ哉