和歌と俳句

踊り

女にも生れて見たき踊哉 子規

袖なくてうき洋服の踊り哉 子規

痩せ村に老もこぞりし踊かな 子規

なまくさき漁村の月の踊かな 子規

温泉の町や踊ると見えてさんざめく 漱石

案の如くこちら向いたる踊りかな 漱石

見て過ぐる四条五条の踊かな 碧梧桐

子規
一村の爺婆こぞる盆踊影もまばらに月更けにけり

子規
盆の月踊の歌ぞ聞えける君は百迄わしや九十九迄

踊りけり拍子をとりて月ながら 漱石

月出でゝ鬼もあらはに踊かな 碧梧桐

うき人の誰見に来けん踊かな 虚子

としどしに月かかる松や踊りけり 虚子

暁に消ゆる変化と踊りけり 虚子

踊りうた我世の事ぞうたはるる 虚子

手をひいて踊りの庭に走りけり 虚子

わぎも子が踊の髪の結ひはえぬ 虚子

学問を憎んで踊る老子の徒 鬼城

はるばるに波の遠音のひびきくる木のかげ深く月夜の踊り 赤彦

女房もなくて身を古る音頭取 石鼎

踊太鼓夕誘ふ海のあなたより 山頭火

門前の床屋の月と踊かな 万太郎

宵月の出汐の踊はずみ来し 亞浪

横顔にさす月厭ふ踊かな 喜舟

踊まだ人ちらほらとそこらかな 虚子

やまぎりに濡れて踊るや音頭取 蛇笏

灯がついて踊の音は大津かな 青邨

掌うら足うら後へかへす踊かな 石鼎

踊の輪又出来かけて止みにけり 石鼎

盆踊の太鼓に遠し浜別墅 播水

踊見る踊疲れを憩ひつつ たかし

うつし世の月を真上の踊かな たかし

踊子のそれぞれ恋をもちにけり 草城

七人の女に恋はれ音頭取 草城

踊りぬけて背にひえびえと松の幹 鷹女