和歌と俳句

夏目漱石

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瀑五段一段毎の紅葉かな

秋の山いでや動けと瀑の音

霧晴るる瀑は次第に現るる

大滝を北へ落すや秋の山

長き夜を我のみ滝の噂さ哉

唐黍を干すや谷間の一軒家

名月や故郷遠き影法師

菊の香や故郷遠き国ながら

旅に病んで菊恵まるる夕哉

行秋や消えなんとして残る雲

に射ん的は栴檀弦走り

影参差松三本の月夜哉

野分して朝鳥早く立ちけらし

曼珠沙花あつけらかんと道の端

十月のしぐれて文も参らせず

うかうかと我門過る月夜かな

手をやらぬ朝貌のびて哀なり

唐茄子と名にうたはれてゆがみけり

初秋の千本の松動きけり

鹹はゆきにぬれたる鳥居

秋立つや千早古る世の杉ありて

反橋の小さく見ゆる芙蓉

古りけりな道風の額秋の風

立つや残る事五十

温泉の町や踊ると見えてさんざめく