土佐で見ば猶近からん秋の山
帰燕いづくにか帰る草茫々
わがやどの柿熟したり鳥来たり
掛稲やしぶがき垂るる門構
疾く帰れ母一人ます菊の庵
秋の雲只むらむらと別れ哉
見つつ行け旅に病むとも秋の不二
この夕野分に向て分れけり
飲む事一斗白菊折つて舞はん哉
憂ひあらば此酒に酔へ菊の主
黄菊白菊酒中の天地貧ならず
簫吹くは大納言なり月の宴
紅葉をば禁裏へ参る琵琶法師
麓にも秋立ちにけり滝の音
うそ寒や灯火ゆるぐ滝の音
宿かりて宮司が庭の紅葉かな
見ゆる限り月の下なり海と山
柿売るや隣の家は紙を漉く
蘆の花夫より川は曲りけり
日の入や秋風遠く鳴て来る
はらはらとせう事なしに萩の露
蜻蛉や杭を離るる事二寸
轡虫すはやと絶ぬ笛の音
谷深し出る時秋の空小し
鶏頭に太鼓敲くや本門寺