和歌と俳句

踊り

踊り子の揃ふ飼屋の虫の声 普羅

踊り子の踏めば玉吐く沢清水 普羅

盆踊落葉松を月駈けぬけぬ 楸邨

踊りゆくどこまでも同じ輪の上を 多佳子

ひとところくらきをくぐる踊の輪 多佳子

秩父人秋蚕あがりぬと来て踊る 秋櫻子

上下の夜河原ほのと此所踊り 草田男

紅袂徒歩に石踏み踊るなり 草田男

行く水に横顔続けや踊の輪 草田男

五十路またよきぞと唱へ宵踊り 草田男

いつせいに手あげて踊りの身が細る 草田男

踊るらめ女泣かせぬ世の来るまで 草田男

踊りの輪切れて崩れて雨はげし 三鬼

脛黒き漁師の音頭荒るる海 三鬼

盆も終りの踊りの太鼓打ちやめし 三鬼

荒海によべの踊りの唄もなし 三鬼

鮪抱く踊りの白き顔のまま 三鬼

踊の灯北斗星さへみな消えて 草田男

踊りが歌ふ「かはらぬものは空の青」 草田男

うらみとは踊も歌もすぎゆくもの 草田男

踊散じて児の瞳の黒き乳母車 草田男

踊るなり月に髑髏の影を曳き 鷹女

てのひらをかへさばすすむ踊かな 青畝

骨のみの工場を透きて盆踊 三鬼

こぞり寄せこぞり去りつつ踊りけり 爽雨