子を思へば青かへるでにそそぐ雨
今日はただ燕を見たし鰯雲
迎へ火の幹を染むるや海霧の中
迎へ火や沖に呼ゐる船の笛
奥蝦夷の海霧の港の蜻蛉つり
海霧の奥の知人岬を指ささる
夕焼は湖の鞠藻にとどかんか
鞠藻手にちぎれちぎれの秋の天
雄阿寒のずりあがりゆく燕かな
雌阿寒の霧ゆけば見えざるさりをがせ
片削ぎにカムヰヌプリは夏雲断つ
動くもの一夏天のみさるをがせ
薄なびく機罐車が曳く四十輛
盆踊落葉松を月駈けぬけぬ
狩勝のまひるの霧の大鴉
花さぴた十勝の国に煙たつ
霧の音はめつむりきかむオセロの香
霧の夜の爪剪るや立つ林檎の香
虎杖の花やほつきを並べおき
オホーツクの秋潮の紺銀狐の目
秋風や銀狐の欠伸つぎつぎに
海に向くきりぎりす籠夕日さす