和歌と俳句

芙蓉 ふよう

八一
ことぐさのつゆけきなかにたちぬれてあさをふようのしろたへにさく

鎌倉の秋はじめての芙蓉かな 万太郎

今宵よりはじまる月夜芙蓉閉づ 青畝

歳月や亡師さながら芙蓉に病む 波郷

ものの絵にあるげの庭の花芙蓉 虚子

深空より甍を垂るる芙蓉かな 風生

白芙蓉松の雫を受けよごれ 虚子

水際へしだひに咲ける芙蓉かな 万太郎

競ひ咲く花にはあらず芙蓉咲く 鷹女

おもかげのうするゝ芙蓉ひらきけり 

旅毎日芙蓉が落ちし紅き音 三鬼

さはやかに芙蓉は花を了りけり 万太郎

紅芙蓉枝の向きむき四山退く 草田男

紅芙蓉白芙蓉又紅芙蓉 立子

初花の対の芙蓉をとみかうみ 爽雨

花芙蓉今宵火星は近づくと 立子

日曜のまためぐり来し芙蓉かな 万太郎

赤坂福吉町芙蓉の咲けるかな 万太郎

姉夏子いもうとくに子芙蓉咲く 万太郎

日曜は人通りなき芙蓉かな 万太郎

豊満の美に佛性や紅芙蓉 風生

今散りし芙蓉の花に蟻わたる 立子

芙蓉咲きにぶき光の沼の端 悌二郎

亡母訪ねくるよな夕焼白芙蓉 林火

師の齢いくつ越えしや芙蓉は実に 波郷

白芙蓉一日一日を大切に みどり女