和歌と俳句

芙蓉 ふよう

白芙蓉きよらなること洗ひ米はた月しろにたとへつべかり 晶子

蟻つきし芯をあはれむ芙蓉かな 石鼎

忘られていく年かへし心地しぬ白き芙蓉に向ひ居たれば 晶子

秋風が目まぐるしくも吹くと云ふ草の中なる紅芙蓉かな 晶子

芙蓉見て立つうしろ灯るや 碧梧桐

箒木は皆伐られけり芙蓉咲く 碧梧桐

母とあればわれも娘や紅芙蓉 かな女

花瓣皆巻きて萎えたる芙蓉かな 泊雲

日輪病めり芙蓉の瓣の翳ふかく 亞浪

水櫛に髪しなやかや花芙蓉 汀女

呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 かな女

朝な梳く母の切髪花芙蓉 久女

色どれど淋しき頬や花芙蓉 久女

妬心ほのと知れどなつかし白芙蓉 久女

一輪を嬲る風ある芙蓉かな 花蓑

うす紅に露さわやかの芙蓉かな 花蓑

飽きし日を佇ちつゞけけり花芙蓉 かな女

泣く心幼きに似て芙蓉かな 月二郎

人妻を恋へば芙蓉に月嶮し 草城

黒髪を梳くや芙蓉の花の蔭 草城

夕冷えに白さ極まる芙蓉かな 草城

逢ひにゆく袂触れたる芙蓉かな 草城

面影はかぜに吹かるる芙蓉かな 草城

萩叢の靡けば見ゆる芙蓉かな 播水