和歌と俳句

八一
かきの實をになひてくだるむらびとにいくたびあひしたきさかのみち

八一
まめがきをあまたもとめてひとつづつくひもてゆきしたきさかのみち

八一
まばらなる竹のかなたのしろかべにしだれてあかきかきの實のかず

柿売つて何買ふ尼の身そらかな 鬼城

柿秋や追へどすぐ来る寺烏 鬼城

おちついて柿もうれてくる 山頭火

にぎやかに柿をもいでゐる 山頭火

空襲警報るゐるゐとして柿赤し 山頭火

しみじみと日を吸ふ柿の静かな 普羅

農となつて郷國ひろし柿の秋 蛇笏

大いなる藁屋根さびし信濃柿 石鼎

包み来し柿の風呂敷の紫よ 石鼎

柿噛んで種ほいとなげ杣の秋 石鼎

柿の蔕猿の白歯をこぼれけり 石鼎

柿の艶にうすき緑や天紺碧 石鼎

赤彦
時雨雲はるれば見えぬ楢山にまじりて赤き柿の木畑

赤彦
楢山の窪みくぼみの村落に柿の果しるく色づきにけり

髪よせて柿むき競ふ燈下かな 久女

柿食ふや俳諧我に敵多し 石鼎

西日して日毎に赤らむ柿の数 久女

許されてむく嬉しさよ柿一つ 久女

高枝柿夕日まぼしくもぎにけり 草城

渋柿の色艶栄えてあはれなり 草城

渋柿のわりなき艶をながめけり 草城

柿秋や懇望されて十四嫁 爽雨

草の家に柿十一のゆたかさよ 龍之介

行楽の眼に柿丸し赤や黄や 茅舎

赤彦
草の家に柿をおくべき所なし縁に盛りあげて明るく思ほゆ

赤彦
蜂屋柿大き小さき盛りあげて心明るく眺めわが居り

赤彦
柿の實を摘むこと遅し故郷の高嶺に雪の見ゆる頃まで

赤彦
柿の木の上より物を言ひにけり道を通るは皆村の人

千樫
柿の木より柿をもぎつつ皮ながら一つ食みたりその甘柿を