和歌と俳句

秋の山

秋山に騒ぐ生徒や力餅 普羅

白秋
麗うらと 日照りさしそふ 秋山に 心ぼそくも 立つる煙か

頂上へ道二すぢや秋の山 石鼎

鳥かげにむれたつ鳥や秋の山 蛇笏

傘の絹枝に触れ鳴る秋の山 汀女

ちはやぶる神垣見えて秋の山 青畝

秋山やこの道遠き雲と我 蛇笏

すでに秋の山山となり机に迫り来 放哉

秋山広い道に出る 放哉

ひもじさに杉の香を聞く秋の山 草城

秋山や草むら浅き焚火屑 蛇笏

秋山や椢をはじき笹を分け 虚子

秋の山摩崖の顔の並びをり 青畝

一片づゝ雲をかぶれり秋の山 かな女

機関車に雲や鴉や秋の山 蛇笏

大巌にまどろみさめぬ秋の山 蛇笏

秋の山灯れるそこも湯を噴けり かな女

人の影踏みて来りぬ秋の山 鷹女

明るさはすぐ廣窓に秋の山 汀女

雲閧烽ヲ笹一色に秋の嶽 蛇笏

秋山はめぐり幾瀬のこもり鳴る 秋櫻子

秋の山首をうしろに仰ぎけり 虚子

秋山や人が放てる笑ひ声 普羅

渓べまで夕雲下りくる秋の嶽 蛇笏

存分に空焼かせたり秋の嶺 誓子

日の没りし裏明るさよ秋の嶺 誓子

秋の嶺ゆふべに燃やす雲すこし 誓子

父のあと追ふ子を負ひて秋の山 虚子

秋嶺を搦めてゆるき径一すぢ 風生

茂吉
栗の實の落ちつくしたる秋山をわれは歩めりときどきかがみて

わがあとに径もつき来る秋の山 風生

八ケ嶺のどの秋嶺を愛すべき 草田男

秋嶺は雲にまみれて野はその影 草田男

林帯をかける橿鳥秋の嶽 蛇笏

欠伸せる口中に入る秋の山 虚子

秋山に野路のとどまる墳どころ 蛇笏

秋山に呼ぶは童子か老い鴉 蛇笏

お舎利みゆこだまをかへす秋の嶽 蛇笏

風烈し日を全貌に秋の嶽 蛇笏

二タ寺の境はここや秋の山 虚子

立つても見坐りても見る秋の山 虚子