友の夏帽が新らしい海に行かうか
写真うつしたきりで夕風にわかれてしまつた
血がにじむ手で泳ぎ出た草原
昼の蚊たたいて古新聞よんで
人をそしる心をすて豆の皮むく
はかなさは燈明の油が煮える
刈田で烏の顔をまぢかに見た
落葉木をふりおとして青空をはく
からかさ干して落葉ふらして居る
傘さしかけて心寄り添へる
赤とんぼ夥しさの首塚ありけり
障子しめきつて淋しさをみたす
庭石一つすゑられて夕暮が来る
木槿が咲いて小学を読む自分であつた
藁屋根草はえれば花さく
今朝の夢を忘れて草むしりをして居た
鳩がなくま昼の屋根が重たい
マツチの棒で耳かいて暮れてる
栗が落ちる音を児と聞いて居る夜
夕ベ落葉たいて居る赤い舌出す
自らをののしり尽きずあふむけに寝る
何か求むる心海へ放つ
波音正しく明けて居るなり
めつきり朝がつめたいお堂の戸をあける
青空ちらと見せ暮るるか