和歌と俳句

木槿 むくげ

家もなき土手に木槿の籬かな 子規

馬ひとり木槿にそふて曲りけり 子規

杉垣に結ひこまれたる木槿哉 子規

道ばたの木槿にたまるほこり哉 子規

木槿咲く塀や昔の武家屋敷 子規

縄簾裏をのぞけば木槿かな 漱石

墓多き小寺の垣や花木槿 碧梧桐


落葉せる さくらがもとに い添ひたつ 木槿の花の 白き秋雨

七浦の祭の木槿咲きにけり 碧梧桐

貝殻も道と聞き来て木槿かな 碧梧桐

草刈れば木槿花さく草場かな 碧梧桐

木槿さく畑の径や木幡山 碧梧桐

いつまでも吠えゐる犬や木槿垣 虚子

牧水
浜街道 住むとしもなき 仮住の 籬根の木槿 盛り永きかも

牧水
さびしきは 紫木槿 はなびらに 夏日の匂ひ 消えがてにして

牧水
南吹き 西吹きて浪の 遠音さへ 日ごとに変り 木槿咲き盛る

牧水
砂ほこり 吹きまきし風の 夕凪に 玻璃戸は重し 木槿輝き

茂吉
雨はれて 心すがしく なりにけり 窓より見ゆる 白槿木のはな

白秋
はらはらと 雀飛び来る 木槿垣 ふと見ればすずし 白き花二つ

白秋
はらはらと 雀逸れゆく 木槿垣 風疾むらし 花の揺れうごく

牧水
見しといはば 見しにも似たれ この秋の 木槿の花の 影のとほさよ

牧水
際白く 奥むらさきの よき花の 木槿おもへば 秋の日かなし

牧水
籬木槿 むらさきに咲く 裾野村 石ころ路を 日暮下れり

牧水
はしり穂の みゆる山田の 畔ごとに 若木の木槿 咲きならびたり

牧水
畑の隈 風よけ垣の 木槿の花 むらさきふかく 咲きいでにけり

木槿が咲いて小学を読む自分であつた 放哉

木槿の花がおしまひになつて風吹く 放哉

木槿一日うなづいて居て暮れた 放哉

お遍路木槿の花をほめる杖つく 放哉

木槿咲くや畑の中の父母の墓 月二郎