和歌と俳句

星野立子

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思ひきや今年の月を姨捨

次の間に女客あり十三夜

高原の秋めく日ざし小雷

流星を見し刻忘れ場所忘れ

銀漢や吾に老ゆといふ言葉きく

月もよし蟲よし送り送られて

貸しくれし秋雨傘をもやひさし

鉦叩こゝにも鳴いて旅半ば

貸しくれし草履うらしき草紅葉

紅葉よし連に見せ度く指さしぬ

行人にかゝはり薄き野菊かな

末枯に立ちて偲べば吾も恋し

昼の間の出来ごと遠く天の川

簾巻きさしもの西日今は無く

わが影の土にますぐに萩に折れ

秋雨や赤鉛筆で速達と

心よきもてなしぶりよ菊ましろ

待宵の談笑四方に酒肴あり

月の友又来し気配甃

この辺に棲みても見たし蘆の花

九秋の一ト日を泊る湖畔宿

木の実降る音きゝすましきゝとがめ

月の庭君きゝゐしか一葉せし

稲扱にかぶせしおほひ紺がすり

残菊や虻とまり搖れ翔ちて搖れ