和歌と俳句

日野草城

9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

鯊釣るや既に散りそめ柳の葉

竿伝ふ濃き夕栄や鯊を釣る

鯊釣や川を白めて暮の雨

海光の一村鰯干しにけり

つよ風に羽薄く飛べるとんぼかな

腋の下明るう飛べるとんぼかな

盛砂へ来て赤蜻蛉とまりけり

大やんま漂ふ月の垣穂かな

女の童一人まじれり蜻蛉釣

白々と松にとまりぬ秋の蝶

秋の蝶晴れし廂にまつはりて

秋の蚊の白紙へ堕つ最期かな

秋の蚊のほのかに見えてなきにけり

夜の比叡へ登る人あり秋蛍

かがまりての音をきく日和かな

なくや灯影隈なき籠の中

遠き虫に声を浮かせてそこの

うらぶれてのまなこに眺め入る

虫時雨わきて今宵は親恋し

須弥壇の真昼鳴く廃寺かな