和歌と俳句

日野草城

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きのこ飯ほこほことして盛られたる

過ちし柚釜ころげてとどまらず

うちひらく白妙寒し秋扇

秋扇二本閑居す小抽斗

帯解くや秋扇落ちて音疎し

淪落の底の安堵や秋袷

熟睡して白き面輪や秋の蚊帳

古蚊帳の別れとなりて恙かな

うらぶれて釣るや雨夜の九月蚊帳

きぬぎぬや青さ眼にしむ九月蚊帳

砧打二人となりし話声

ほとほととたたけば愁湧く

嫂とよくうまのあふ砧かな

冷え性の蓆重ねて砧かな

後れ毛をふるはせて打つかな

縁遠き姉妹二挺かな

縄尻を控へて縫へり鳴子引

如意ヶ嶽を去らぬ雲影稲を刈る

日かげりて愁ふる稲を刈りにけり

稲刈やわが家灯りて夕心