和歌と俳句

高浜虚子

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まだ人ちらほらとそこらかな

水車小屋を推し包みたる芭蕉かな

船頭遂に蓑笠つけて雨月かな

空に伸ぶ花火の途の曲りつつ

新涼の月こそかかれ槇柱

茂りより芭蕉広葉の垂れし見ゆ

先に行く提灯の水たまり

萱に触れかなかりの露に驚きぬ

秋風に向つて門を出でいけり

柚子一つ供へてありぬ像の前

提灯の明らかになる露の道

月の友三人を追ふ一人かな

灯火の明き無月の庵かな

秋晴に足の赴くところかな

仏前の灯をふきぬ秋の風

麓川光りて見ゆる茸山

木の実降る音からからと藪の中