和歌と俳句

残暑

秋暑したててしづくす藻刈鎌 蛇笏

ゆかた着のたもとてれなき秋暑かな 蛇笏

草籠に秋暑の花の濃紫 蛇笏

残暑なほ単衣の肌に汗ばめど磯の木蔭に鳴く蝉もなし 耕平

杣人の頬ひげあらし残暑どき 蛇笏

秋暑い乳房にぶらさがつてゐる 山頭火

口紅の玉虫いろに残暑かな 蛇笏

閼伽桶に秋暑の花のしづみけり 蛇笏

したたかに閼伽たてまつる秋暑かな 麦南

瓢箪の出来の話も残暑かな たかし

きのふより根津の祭の残暑かな 万太郎

竹植ゑて中庭くらき残暑かな 万太郎

子を置いてなりはひ妻の秋暑かな 月二郎

さまざまにビルのむらだつ残暑かな 草城

黒絹に肌のちらつく残暑かな 草城

巌山の葛咲きかへす残暑かな 蛇笏

白い服いまだぬがざる残暑かな 万太郎

病人の精根つきし残暑かな 虚子

山の宿残暑といふも少しの間 虚子

昼餐の果あまずゆき秋暑かな 蛇笏

三寶寺池はまださき残暑かな 万太郎

友を葬る老の残暑の汗を見る 虚子

見苦しや残る暑さの久しきは 虚子

残暑の扉出でゆく足音聞きまじとする 悌二郎

秋暑しつとめのバスに恋つのり 不死男

なかなかに二百十日の残暑かな 虚子

夏木やや衰へたれど残暑かな 虚子

大いなる団扇出てゐる残暑かな 虚子

秋暑き汽車に必死の子守唄 汀女

よべの月よかりしけふの残暑かな 虚子

老ひしひと残る暑さの中に処す 誓子