立つ秋ののうぜんかづら垂るゝかな
夕空にひかりみえきし花火かな
買つて来しばかりまはるや走馬燈
きのふより根津の祭の残暑かな
竹植ゑて中庭くらき残暑かな
朝顔や累ヶ淵の一とくさり
日一日寒くなりゆく芭蕉かな
鶏頭に秋の日のいろきまりけり
峰つくる雲もなごりや秋の暮
そら耳にきこゆる猫の鈴夜長
長き夜や坂下り際の月あかり
長き夜や舞台のかげの幕だまり
松茸を焼く香いとしき夜長かな
手向草すゝきまじへてあはれなり
帯留の翡翠も淋し萩の中
蟲の聲金魚の夢にこぞりけり
鶏頭花古き銀貨の釣銭もかな
朝寒のいさゝか青きものゝ蔓
ちりそむる柳がもとの夜ぎりかな
おもひでの道墓みちの夜霧かな
縁に出し一人に深き夜ぎりかな
出世大黒まへの柳散りにけり
寝返してみたる夢もや今朝の秋
糠雨のいつまでふるや秋の蝉
あさがほにまつりの注連の残りけり
枯いろは芒穂をぬく草の中