和歌と俳句

久保田万太郎

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来ては去るバスをけしきやの町

盆まへのあつさみへ来し往来かな

一むかしまへうち語る切子かな

ながあめのあがりし燈籠流しかな

剥げそめし空の青さや秋の蝉

たくましく長けしあはれや鳳仙花

かゞよひて川波さびし西瓜売

芒の穂海の濃青をふくみけり

猫八に二代目ありしかな

猫八の鈴蟲なれど酒の冷え

いましがた九時をうちけり十六夜

秋の風海をけしきの町往来

傘売のぬれてゐるなり秋の雨

焼松茸といんげん豆のきんとんと

刻々に東京ちかき案山子かな

昼のラヂオどこにも聞え案山子かな

大皿の酢蛸も淋し秋まつり

大学の門出でくれば秋まつり

戒名をことづかりたる夜寒かな

硝子戸の外の眺めや秋時雨

障子貼りて月のなき夜のしづかなり

瀬の音をきゝつゝ貼りし障子かな

秋澄むや五輪のいろのそれぞれに

茄子の艶すでに秋澄みゐやりけり

八月や夜目にもしろくこめし雲

山の夜のビール四五本女郎花