夏痩のふしぶし高しけさの秋
士用より朝顔咲て今朝の秋
尽ぬ世のためしを星の逢夜哉
海士が子の乾かぬ袖をほし迎へ
暁の簗に落けり天の川
空蝉を見るにも星の別れかな
賑しやよき世の人の魂祭り
なるゝ間のなきもはかなし魂祭
岩角をふみかく駒の野分かな
一さかり萩くれなゐの秋の風
朝顔も実がちになりぬ秋の風
いなづまのむら穂に通ふ田面哉
風の間や置ならべたる草の露
朝顔や清きかぎりをさき出る
蘭の香や糸なき琴のしらべより
霜にそむ秋に逢けり女郎花
兵の矢先に似たり唐がらし
秋の蝶いかなる花を夜の宿
秋の蚊やおのれつらしと昼もなく
むしの音やこぼれもやらで萩の上
我夢の化してや床のきりぎりす
棚もとや処もかへず蟋蟀
暮るゝ間を絵絹に染ん露の萩
しら萩やいざよひの間を散初る
月と我中に今宵のけしき哉