和歌と俳句

松岡青蘿

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

夏痩のふしぶし高しけさの秋

士用より朝顔咲て今朝の秋

尽ぬ世のためしを星の逢夜

海士が子の乾かぬ袖をほし迎へ

暁の簗に落けり天の川

空蝉を見るにも星の別れかな

賑しやよき世の人の魂祭り

なるゝ間のなきもはかなし魂祭

岩角をふみかく駒の野分かな

一さかり萩くれなゐの秋の風

朝顔も実がちになりぬ秋の風

いなづまのむら穂に通ふ田面哉

風の間や置ならべたる草の露

朝顔や清きかぎりをさき出る

蘭の香や糸なき琴のしらべより

霜にそむ秋に逢けり女郎花

兵の矢先に似たり唐がらし

秋の蝶いかなる花を夜の宿

秋の蚊やおのれつらしと昼もなく

むしの音やこぼれもやらで萩の上

我夢の化してや床のきりぎりす

棚もとや処もかへず蟋蟀

暮るゝ間を絵絹に染ん露の萩

しら萩やいざよひの間を散初る

月と我中に今宵のけしき哉