瓜の葉の 瓜をつゝみて冷しけり
すゞしさや八十島かけて月一つ
松一木馴てすゞみのたよりかな
舟に病みし身をうし窓の夕凉
笹折て赤蟹なぶる夕す ゞみ
すゞしさや惣身わするゝ水の音
三つよれば其師やあらん蝸牛
我隣蚕に交る麦の秋
角あげて牛人を見る夏野かな
田艸取うた泣にはまさる夕景色
鍬を取業はこまかよ豆のはな
葉には其うらみもあらむ葛の花
若竹に月のうすものかづけけり
口なしの淋しう咲り水のうへ
寐ごゝろや萌黄の蚊屋の薄月夜
暑き日や撫子つまむ山のかげ
ゆふ立や秋を催す黍ばたけ
萍やはづれては又月のうへ
蚊一つに身をくれかねて宵寐哉
よしあしの其まゝすゞし蟹の穴
秋近し露に溢るゝつゆの月
ぬけて行茅の輪の先や夜の秋
松の蝉啼つゝ秋に移りゆく
草の戸の見事や今朝を露の秋
秋たつや人さめわたる艸の庵