和歌と俳句

野村喜舟

砂山に波及びゐる雷雨かな

黒栄や浪に打たれて天の在り

蛍火や茫と城ある河向う

池の舟風に動くや芥子の花

短夜を押しあがりたる井水かな

短夜や磧に灯る晒布小屋

日の当る大岩しぼる清水かな

土用浪銚子の町にきこへけり

月見草いたる処に萎れけり

刀根の水ゆたかにひきし青田かな

青田中大師の甍据わるかな

青桐の三本の影かたまりぬ

薫風や浅間の煙吹きかはり

日盛を蕎麦屋暗きに入りにけり

麹町十三丁目までかな

結綿に花櫛に三社祭かな

蝸牛這ふ礎ばかり残りけり

雪舟の達磨の前の牡丹かな

大崩また崩るゝや夏の海

夏足袋に明石縮の流れけり

日輪を包みし麦の埃かな

芭蕉棕梠椎樫ぬるゝ梅雨かな

万筋の縞が流るゝかな

東海の日に朝からの日除かな