芋の葉に玄翁の火や石碑彫る
葉を喰はれて芋や土中に黙し居る
芋洗ふ底を濁せし緋鯉かな
一本の黍に鈴なりの雀かな
新鍬の切れ味見よや土の秋
屋根越しに見る藪の穂や秋の雨
枝戦へど幹静かなる野分かな
蟷螂壁に白日濁る野分かな
草の中に小家漂ふ野分かな
地蔵会や漏斗を据ゑて賽銭箱
地蔵会や祠とりまき土産店
草の花仔牛とばせて面白し
親の股くゞる仔牛や草の花
栗の毬より野菊咲き出し山路かな
童子二人担へば重し芭蕉の葉
瀞に映る絶壁広し蔦の秋
草紅葉蝗も色に染まりけり
葉巻虫楚々とかくれぬ稲の露
秋雨や靄の往来に窓くらし
板屋打つ音次第に強し秋の雨
貝割菜の一叢生や秋の風
筧の水しばしば崖に吹きあて野分哉
日に焦げて上葉ばかりの紅葉かな
葉の戦ぎに少し応へて芋の茎