和歌と俳句

西島麦南

月光に風のひらめく秋ざくら

向日葵の秋日の蕊となりにけり

今年藁みどりほのかに新娶り

山の墓香煙雲のごとき秋

山廬忌の秋は竹伐るこだまより

秋茄子の露の二三顆草がくれ

秋霖の夕焼ほのと飛燕見ゆ

熟れそめて細枝のしなふ柘榴かな

照紅葉且つ散る岩根みづきけり

咲きのぼる秋暑の胡麻に烏蝶

障子はる影もろともに老いにけり

新涼の剃刀触るる頬たかく

静脈のほのかなる手に檸檬きる

茸狩りのわらべこだまに憑かれけり

仲秋や母に明るき仏の灯

鳳仙花露の香あまく日に濡れぬ

綿摘むや雲のさゝなみ空たかく

木犀の香や年々のきのふけふ

夕風にしはぶき拾ふ落穂かな

夕霧や地にしづまりし麦の種

竜胆に霧ふる泉澄みにけり

檸檬青し海光秋の風に澄み