走馬燈ながるるごとく人老ゆる
芭蕉風吹いて塵浮く手水鉢
魚板うてば四山相応ず今朝の秋
黍刈るや高原の土秋暑し
帰燕とぶ空を見て干す漆壺
山墾いて杣も農たり芋の秋
穀蔵を出て山明るし櫨紅葉
菊の灯に酌む雪寃の面かな
痢人の手触れてをののく芙蓉かな
笑ふときかなしき顔や秋扇
眉剃つてかんばせ広し秋の風
霧こむる四山や湖舟静かなり
稲刈るや連山四顧の秋濶し
豊かなる国土の日かな稲の花
掃苔の埃あげたる箒かな
庵の塵掃きとる秋の団扇かな
さらさらと風たつ笹の秋日かな
秋風やおとなふ庵の藪がくれ
秋の夜の身になれそめし衾かな
夕霧や家路に馬のおとなしき
山風にもまるる影や鳥おどし
うつしみをいとほしみ張る障子かな