丹波路の稲架の高さよ黍も掛く
いつの間に流燈欄の近くまで
流燈のひろがり浮ぶ湖心かな
湖にうつりし月の大きさよ
湖に月とはなれてうつる雲
神苑の裏にまはれば秋の蝶
秋晴や十六禿を眺めつゝ
水引の花持つてきくお経かな
この町の半鐘ひくしや秋の雨
秋晴の人出砂丘の中の我
足許の松に鵙鳴き懸巣鳴き
山陰の旅も終りや後の月
来あはせて後の月なり泊雲居
あら草履砧で打つて渡されぬ
朝霧にもぎし柿よと渡さるゝ
霧深き丹波竹田を立つあした
秋水にうつりし人のふり向きぬ
あきらかに菱の浮葉の紅葉かな
いつか失せぬ手折り持ちゐし吾亦紅
茸ありぬ大きな歯朶の葉をかむり
夕鵙のうしろ髪引き鳴きわたる
いく度も煮なほす茶かな紅葉茶屋
何よりもうるし紅葉が目をうばふ
漸くに心静かや鵙もなき