和歌と俳句

加舎白雄

うす紙の灯籠にてらす草葉哉

おどる夜を月しづかなる海手哉

むかひ火や父のおもかげ母の顔

霊まつやはしらさだめぬ宵の宿

魂むかひこゝろ碓氷を越る夜ぞ

みな子なり霊まつ門に草箒

しばしもとなき魂やどせ艸の露

魂まつり貧家の情ぞまことなる

先匂ふ真菰むしろや艸の市

松高し月夜烏も放生会

橘もあすかの里も衣うつ

我きぬを脱てうたせてきく日哉

人や住桃のはやしの小夜ぎぬた

新酒くまん四十九年の秋は何

早稲酒に垂打ばかり酔にけり

冬瓜汁空也の痩を願ひけり

ことさらにつくらぬ菊ぞ九日なる

菊や咲我酒たちて五十日

きりぎりす鳴止で飛音すなり

とし四十蜩の声耳にたつ

竈馬や行灯につりしとうがらし

秋の季の赤とんぼうに定りぬ

まつむしの啼音やさゆる銅盥

夜長さやところも替ず茶たて虫

艸の庵籠ぬけの をやどしける

高浪や象潟は虫の藻にすだく