声暗しひるは別れて啼鹿か
鴈が啼君が四阿関屋かな
風落て綱懸の 鶉見日哉
鴫たつてくれの焚火のもる家哉
漆掻あたまのうへや鵙のこゑ
鶺鴒の庭籠を覗く流哉
山風や世を鮭小家の影ぼうし
落鮎のあはれや一二三の簗
かけ稲やあらひあげたる鍬の数
露はれて露のながるゝばせを哉
空ぐせや尾花が末の猪子雲
猪をになひ行野やはなすゝき
宮城野や萩の下露川なさん
朝がほや垣にしづまる犬の声
渡る瀬にあらしの桐の一葉哉
菊咲て花ともいはぬあるじかな
酒造る隣に菊の日和かな
立出て芙蓉の凋む日にあへり
鶏頭の濃もうすくもあかき哉
此秋もわれもかうよと見て過ぎぬ
渋柿や嘴おしぬぐふ山がらす
牛の子よ椎の実蹄にはさまらん
毬栗の簑にとゞまるあらしかな
礒山や茱萸ひろふ子の袖袂
ことごとに我もしらずよ秋の艸