落る日にあら海青き寒哉
くらき夜はくらきかぎりの寒かな
氷る夜や双手かけたる戸の走り
つくろはぬものや師走の猿すべり
月雪や旅寝かさねて年一夜
行年やひとり噛しる海苔の味
はつしぐれたがはぬ空となりにけり
夜の雨はじめ終をしぐれけり
月は花はけふはしぐれの翁哉
こがらしの吹よはりたる天守哉
こがらしや大路に鶏のかいすくみ
こがらしや潮ながら飛浜の砂
蕎麦刈や鎌の刃に霜を降こぼし
鐘の声霜を知る夜の眉重き
日に消ぬ霜とやかこつ母の髪
小夜あられ起見んばかり降にけり
みぞれてもしらじらつもる穂垣哉
降晴て雪氷るかに光さす
飛たつは夕山鳥かゆきおろし
あかつきや氷をふくむ水白し
庭艸のよごれしまゝに風の凍
浅からぬ鍛冶が寐覚や冬の月
寒月や石きり山のいしぼとけ
馬のあとかれ野の野越いそがるゝ
七つ子にあふてさびしき枯野哉