和歌と俳句

加藤暁台

もとの露すゑのしづくや花木槿

二日咲木槿となりてあさ寒し

白木槿糸瓜の中に咲にけり

柳ちるや少し夕の日のよわり

秋かぜをかづきてふせり女郎花

をみなへしあやうき岸の額かな

はいなづまに見る莟かな

あさがほの花はぢけたりはなひとつ

月草の色見えそめて雨寒し

月くさは露もてはなをくゝるかな

きりこめて那須野狩野の犬の声

うつり行日に衰へて夜は長し

かはる夜や心寄せなき秋のくも

かぜなりやうち返るのほの白し

小比丘尼の折て捨行野萩

桔梗咲て何れも花のいそぎかな

夕闇を静まりかへるすゝき

蛇のきぬかけしすゝきのみだれ哉

をばな夕越えゆけば人呼ふ

を花散や鬢の毛を吹風の筋

つたの葉の水に引るゝやま辺かな

垣のつた濡重りぬへちまの葉

ひぐらしや明るき方へ鳴うつり

蜩のなけばひさごの花落ぬ

声しみじみ浮世に遠し秋の蝉